桑浜総合センター
土間を囲み多様な集まり方をつくる
桑浜総合センターは、石巻市雄勝地区で新しい高台造成団地に建つ最初の集会所です。市の補助金で建設しますが、維持・管理費は地区が負担するため、高齢化や人口減少が進む中で、適切な地域運営が求められていました。
プランニングは地区会と相談し、意見交換を繰り返しながら、コンパクトながらも様々な使い方ができるよう工夫しています。漁村集落ならではの風習や文化、体験を空間化できるよう、次の3つのコンセプトをもとに設計しました。
1. 魅力的な半外部空間
漁業を生業にしている雄勝では、1日の大半を外で作業する生活の中で都会では見られない豊かな外部空間の使い方があります。どの家にも見られる縁側は、人が訪ねてくるとすぐに分かる小さなコミュニティの場でした。そんな訪れた人をおおらかに迎え入れる空間として、集会所の中央に「土間」を設けています。半透明のポリカーボネート屋根から光が差し込む明るい土間空間は、BBQなど地区の様々なイベントで利用することができます。
2. 一つの部屋では完結しない
雄勝では冠婚葬祭も全て自宅で行っていたため、昔の家は〈茶の間・おかみ・座敷〉と3間続きで、小さな集まりから大人数まで使える可変的な間取りでした。集会所は、総会などの集落の全住民が集まる「大広間」、婦人会など小さな会合のための「和室」「キッチン」といった各室を、「土間」を囲んでコの字型に配置し、窓を開ければ内・外を一体的に使うこともできます。規模や用途に合わせて多様な集まり方ができる空間を目指しました。
3. キッチンを真ん中に配置する
集会所の影の主役は何と言っても「キッチン」です。桑浜では海の神様を奉る龍神会など、地区の催しに料理は欠かせません。新鮮な海の幸を浜のお母さんたち皆で料理します。最もアクティビティが高い「キッチン」を真ん中に配置するとコミュニケーションが生まれやすく、落成式では「そっちの殻剥いて!」「もう茹で上がったかしら」と、活気のあるお母さんたちの声が響きました。