HOUSE f
生活の〈質〉をデザインする
みんなで仕上げた、拭き漆の床と天井
宮城県東松島市に設計した〈HOUSE f〉は、60代と80代という高齢の夫婦+猫1匹+犬1匹が暮らす二世帯住宅です。施主は、津波をかぶって床上まで浸水した住宅を建て替え、「今の」生活に無理なく呼応する、居心地の良い家を望んでいました。そこで(月並みですが)、愛着を持って楽しみながら住み続けてもらえるような機会を設計の中に組み込んでいます。
「拭き漆」という手法
拭き漆とは、木地に生漆を塗ってウエスで拭き取る工程を何度も繰り返すことで、木目を引き立たせる漆塗りの技法のことです。乾いた木に潤いを与えるように、手間をかけて丁寧に漆を塗り込むと、深みのある美しい仕上げとなります。また、耐熱性や耐水性に優れ、抗菌・防腐効果もある自然素材なので、子供が裸足で駆け回っても安心です。
しかし「漆の生産量の低下」「職人不足」「手間がかかること」などから、拭き漆の建材は通常とても高価なものとされています。本当に良い自然素材が社会的なニーズに合わず、供給量が縮小し、上手く活用されていないことは残念な現実です。
漆はよくかぶれると心配されますが、拭き漆は正しい知識があれば、誰でも気軽にできる技法です。f邸では、専門家による指導のもと、DIYが得意な施主、地元の学生、若手設計事務所スタッフ、建材メーカー、工務店など、多くの方と一緒にワークショップで、床・天井合わせて約1,200枚の杉板を拭き漆で塗り上げました。
どんな家族にも生活があり、日常があります。住宅はそんな毎日を過ごす器です。
おじいちゃん、おばあちゃんの部屋は水回りを別に設け、生活時間が異なる家族がストレスなく過ごせるよう計画しました。また畑仕事が趣味のおじいちゃんの様子がリビングからでも確認できるよう、南側に大きな窓を設けています。深い軒が適度に日射を遮り、心地よい室内環境をつくり出しています。
母屋と物置小屋は、同じ三寸勾配の屋根で揃え、「親分・子分」のようなヒエラルキーをつくりました。野菜やハーブが育つ庭の畑や、生活道具が詰め込まれた物置小屋と土間。そこには、美しい日常の匂いが息づいています。